【映画】『人間失格 太宰治と3人の女たち』【ネタバレあり】
初めて、映画について書きます(たぶん)。
映画、見ます。でもね、感想ってなに書いたらいいかわかんないんです。映画の良し悪し、小説の良し悪し、わかんないんです。
でも蜷川監督の『人間失格』、私の「好き」が詰まった映画だったので、書きたくなりました。書かせてください。
INDEX
内容
タイトルは『人間失格』ですが、太宰の作品人間失格ではなく、太宰治その人の、女性関係と人生を軸に、作品人間失格の<制作秘話>を描きます。
三島由紀夫じゃないですが、太宰治っていう人はとにかくダメな男なんです。プライドは高いのにコンプレックスの塊で、だから見栄っ張りで(注:私のイメージです)。
しかし、モテる。
何度も女性と心中未遂をしています。
それだけ、魅力的な人だったのだと思うのです。
女性を魅了してやまない才能と色気を持つ太宰を、小栗旬さんが演じます。
感想(ネタバレあり)
「私は、良かった…!」です。
「私は」というのは、私の好みにぴったり合ったためです。
『3人の女たち』ということで、3種類の恋があります。恋とは言えども、大人の恋です。エロティックなんです。なんですが、そこは蜷川実花さんの映画。まるで鮮やかな少女漫画のように仕上がっています。
エロティックであり、ロマンティック、という感じです。
そして小栗旬演じる太宰は…見た目は違うのに、すごく太宰らしい。キャラクターとしてとても可愛らしいんです。
そして3人の女性も、とても個性的で、まったく違う女性たち。
そんな女性たちと出会う時、太宰の態度が三人三様、変わるんです。これがとっても可愛らしい。これだけで、それぞれの女性を太宰がどう思っているのか、よくわかるんです。
女性として奥さんの肩を持ちたくなってしまうのかもしれませんが、妻に甘える様は本当に可愛いですね。かまってほしい感じが。そりゃあ、わざわざ起きて世話やくわっていう。
それにしても太宰治というのは本当にダメな男なので、奥さんがいるのに他に子供を作ったり、家に帰らず愛人の家に入り浸ったりするわけです。
本当にクズなのです。それは見る前からわかっていたんです。わかっていたんですが、最後まで観た今は…結局、女というのは強いなと。翻弄されたのは、太宰だったんだな、と。
太宰がどんどん弱っていく姿は、肺炎のせいなのですが、まるで女性たちに生気を吸い取られていくようにも見えます。
女性はみんな逞しい。世間は太宰に人生を台無しにされた悲劇の女性と思うでしょう(今でも世間っていうのは、勝手に女の幸せを定義します)。
最後に太宰は死にました。それでも、女性3人は全員、自分の望みを叶えています。
これは太宰の話なのか、太宰を取り巻く女性の話なのか。
最期のスカパラは痛快です。
ここまでトータルで、ザ・蜷川実花って感じです。
個人的には、藤原竜也演じる坂口安吾も大好きです。坂口安吾は太宰ほど知らないのですが、「坂口安吾じゃん!」て感じでした。坂口安吾のセリフもよかった。私も芸術というのはかくあるものと思っているので、藤原竜也に言われたらもう…興奮します(笑)
これが好きな人にはおススメできる
私にぴったり合った、ものたちです。
これが好きなら、興奮すると思います(笑)
太宰治が好き。
当然なんですけど…(-_-;)
太宰作品を読んで、太宰が好きな人なら…太宰がほんっとにだめな男だっていうのは知ってますよね。
無責任で、頼りなくて、自分勝手。
しかしその中に見える繊細さ、幼稚さ、無垢…そんなものが好きなんだと思います。
でも『太宰治』という人は人間の弱さにつけこむせいか、細かい、でも決定打になるところは、その人によって違うのです。それぞれの、理想があるのです。
その『太宰治』を、小栗旬演じる太宰は、キャラクターとしてしっかり仕上がっています。
3人の女優が好き
たまたま(?)3人とも私の好きな女優さんでした。
「好きな」じゃ足りないな。「大好きな」女優さんたちです。
そして3人とも、それぞれのイメージに合ってる(笑)役柄で、最後の3人はそれぞれ勝利しています。これも痛快なんですよ。この勝利の仕方が、すごく本人らしいんです。
ザ・蜷川実花な色や写真が好き。
私は学生時代によく、蜷川実花の写真を見ていました。
それを、そのまま大画面で見たような映像から、映画は始まります。
鮮やかでたくさんの花を使った演出なんかは、本当に、「蜷川実花」って感じで、「あぁ、これだ、私は蜷川実花の映画を見ているんだ」と、何度も思いました。
衣装や道具もいちいち可愛らしいです。
壁もありえない色なんです。各シーンやキャラクターのテーマカラーですね。だって蜷川実花だもの。たまんないです。
蜷川幸雄の演劇が好き。
小栗旬と藤原竜也っていう時点で、これですよね。
しかも、「これもう、演劇じゃん」と思うシーンがたくさんあります。藤原竜也が出てきたところなんか、本当に演劇かと思いました。
そして蜷川実花の色使いではありますが…窓の外の照明や風車や日の丸など…お父さんのお芝居を見ているような感覚になります。
演劇にしてほしいくらいです。
パンフレットが2種類ある
この世界を忘れたくないと思った私は、(普段はあまり買わないのに)パンフレットの購入を決意しました。
劇場で普通に売ってるパンフレットなんですが、
・通常版 ¥850
・特別版 ¥1,200
と、2種類ありました。
店員さんに「なにが違うんですか?」と聞いたら
店員さん「あー……特別版の方が…豪華です。」
わたし「…なるほど。(…だろうとは思ってた(°_°))」
という会話の後、特別版に決めました。
うわあああ蜷川実花!!表紙だけでもすばらしい!
なにも考えずに決めましたが、とにかく写真がたくさんあります。
…でも、これはそうかな、と思ってました。
予想外だったのは、シナリオが収録されていること。
+¥350でシナリオが収録されるってどういう計算……?
贅沢すぎて、意味がわからなかったです。
じっくり読みたいので、今はまだ封印しておきます…。
パンフレットを買うなら、特別版が断然おトクです。
映画館を出て、ゆっくり歩きながら「…良かった…」と、ひとりで呟いてしまいました。
私には、はまりました。
もう2回は見たい作品です。
太宰治、ダメなやつなのに惚れてしまいます。
知らない方も、よろしければ、見てみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。