いちばんちいさなうみ

可愛い・かっこいいを偏愛して、しあわせを目指すブログ。OL脱出ゲーム中。

【まるで新型コロナ】『ペスト』カミュ【ネタバレあり】

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こんばんは。

 

毎日毎日、新型コロナウイルスのニュースでもちきりですね。

この影響、いつまで、どこまで、続くんだって感じで、

終わりが見えないのが、不安ですよね…。

 

なにが正しいのか、大袈裟なのか、でもやっぱり気をつけないといけないし…。

どの情報を信じればいいのかも、わからないです。

 

思えば最初から、想定外の展開の連続でした。

中国・武漢の閉鎖が、もう衝撃的でしたもん。

 

そしてどんどん患者が増えて、いろんな公共施設を病院がわりにしたりして…。

 

日本を含めた中国以外の国は、自国の国民を帰還させるためのチャーター機を出しましたね。

「そんなことあるんだ…」

と思いました。

この時点でも、すべてにびっくりでした。

 

今度は帰ってきた人たちに一定期間過ごしてもらう施設がなくて、公務員の施設が使われたりして…

 

『普通じゃない』っていうのをいちいち感じました。

 

でも、この辺まではまだ、そんなに近いことと思ってなかったんですよ。

間近になったのは、やっぱりマスクですよね。

マスクがこんなになくなることなんて、

さらに高額転売されるだなんて!

予想もしなかったし、

なんだかんだ言っても日本人は「自分は大丈夫精神」だと思っていたから(ごめんなさい)、

本当に外に人が少なくなるとは!

 

報道や政府の動きが大袈裟だって言う人もいるけど、結局外国もイベントとか中止していて…。

たぶん、全て過ぎ去って、落ち着いてみないことには、

大袈裟だったのか、

正しい判断だったのか、

わからないでしょうね。

 

それに、なにを舞台とした当事者なのかによって、

どこに軸を置くのか、人によって全然違うわけですからね。

みんなの『1番大事にしているもの』が、違うんですよね。

 

政府はできるだけ広げないことだろうし、

お医者さんは早期発見して治すことだろうし、

わたしたちはかからないように、ですかね?

これはすべて『命』を優先してますよね。

『経済』

『教育』

『心』

etc…

 

大事にするものが違うと、意見が変わってくるは当然です。

 

前置きが長くなってしまいました。

このコロナショックを予言したような名作があります。

 

それがカミュの『ペスト』です。

 

『ペスト』 

あらすじ

アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。

(Amazon内容紹介より)

 

もう、これは、すごい。まじすごい。

とにかく、おもしろいんです。

すごく厚い本で、読書に多少慣れてるくらいじゃ二の足を踏むレベルの厚さです(わたし)。

でも、読み始めるとぐんぐん進みます。

なぜなら、おもしろいから。

あまりにもおもしろいから。

先が読みたくて読みたくて仕方がないんですよ!

この本は、そもそも、こんなにおもしろい本なのに…

あらすじを読んでおわかりでしょう。

現在のコロナショックの動き方の、予言をしているのような内容なんです。

 

まるでコロナショック?な内容(ここからネタバレ)

架空都市オランでの、ネズミの大量死からはじまります。

最初はなにが起こったのかわかりません。

わからないうちに街中に広がっていき、

読んでいるだけで気持ちの悪い光景が目に浮かび、

ネズミの金切り声が聞こえます。

 

そもそもネズミがいない建物にネズミの死骸があることで、

門番はタチの悪い悪戯だと怒って、見張りをはじめました。

それでも増えていくネズミの死骸を、片付けるのももちろん門番です。

ある日、門番の容態が悪くなり、

あっという間に死んでしまうのです。

 

門番から始まったこの症例が、街に少しずつ見えるようになってきました。

違和感を感じた医師リウーは、死亡者数を報告させます。

この時点では、まだ、この異様さを感じているのは医師たちだけでした。

知事も楽観視していました。

 

『ペスト』という言葉を耳にするまでは。

 

まるでヴォルデモードみたいな、名前を言ってはいけないような、それほどの恐怖心をもたらすペストという言葉。

 

ペストは、新型コロナウイルスのような新しいものではなく、遠い過去に記録があった病気です。

しかし、その時の記録の数字は、数え方すらわかっていなかった時代の数字なので確実ではないことを、医師リウーは知っていました。

 

過去の例があるとはいえ、実際の記録は今初めて取っていくことになるということ。

つまり…なにが起こるのか、実質なにもわからないということです。

 

どんどん増えていく死亡者数…

 

知事は、突然、街の行き来を閉鎖しました。

そう、まるで武漢ですよね。

今は感染者数が多い国に滞在歴があれば、入ることができない国もたくさんあります。

でも、この街はもっと厳しくて。

旅行者であっても、仕事でその時間滞在しただけの人であっても、出ることができなくなりました。

出たら射殺されるレベルです。

 

それでも、最初は街の人たちも楽観視していたんです。

 

そう、「いつか終わる」です。

 

しかし…

やっぱり終わりが見えないのです。

 

そうなると、オランの街がどんどん変わってきます。

行政の対応の遅さ、現実から目をそらし続ける市民たち…

そうこうしている内に病床が足りなくなって、

公共の施設にベットを持ち込むようになりました。

だんだん、公共の施設だけでは足りなくなります。

家族が感染すると、その同居家族も専用の施設に隔離されるようになりました。

物価も高くなり、貧富の差が激しくなりました。

 

戦争という不条理と現在が重なっている?

現在イタリアでは、罹患者・死亡者が多すぎて、

陽性が出たら隔離施設→亡くなったら葬儀もなしに火葬

というニュースを見ました。

これも、まるで『ペスト』をなぞっているかのような状態…。

 

じゃあカミュはこの『ペスト』が流行することを予想してこの話を書いたのでしょうか?

いえ、あらすじの最後にもある通り、

カミュは、ナチスドイツ占領下の不条理を『ペスト』という小道具を利用して暗喩したといわれているんです。

占領下の過酷な状況で、仲間同士の裏切りや密告、愛する人との離別、罪なき人の死…。

 

そんな絶望の中で、それぞれの行動をもって生きていく人々…。

 

この本の無気味さというか、怖さというか、更に深まります。

不条理な死という共通点が、こうまで同じ状況を生み出すなんて…。

現状の捉え方が、更にわからなくなります。

でも、きっと私たちは現状から逃げるでもなく、

行動して戦っていくしかないのだと思います。

 

私たちの世界

すごく長い本だし、読んでいてつらいシーンもあるんです。

でも、最後まで読むと、もう一度読み返したくなります。

私も、即読み返しました。

本を読み終えたら、大体は感傷に浸りたい…特にこの本は…。

なのに…!

「こんなにおもしろい本があったなんて!」

と、興奮冷めやらずな状態になってしまって、その勢いでまた最初に戻ってしまいました。

現実に戻っても、この本の登場人物のことばかり考えてしまいます。

 

ここまで、戦争や、今の新型コロナウイルスの現状に…とか書きましたが、

そもそも不条理って、普段から私たちの世界にあふれてるじゃないですか。

 

でも、私たちは、自分の信じる行動をしていくことで、前に進もうとします。

先なんて見えなくても、行動することで進もうとします。

 

今、コロナショックと呼ばれるほど、金融市場も大混乱しています。

金融市場が混乱するということは、人々が不安でいっぱいということなんです。

 

こんな時こそ、私たちの大事にするものに気づき、誠実に生きていく必要があるのだと思います。

 

ぜひ、今、『ペスト』を読んで、いろんな登場人物に触れて欲しいです。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!