【ネタバレあり】こちらあみ子感想【今村夏子さん芥川賞おめでとうございます】
『こちらあみ子』2回目です。
お題「海」と同じです。2回目です。
昨日【ネタバレなし】の記事を書きました。もやっとしてます。かけないんですよ。全然ぐちゃぐちゃなんです。だって丸々ネタバレなしですもん。
そもそも小説ですよ?ネタバレなしってなんですか?漫画の新刊とかで使うんじゃないんですか?なんなんですか?(お前だよ!)
やっぱり無理がありました。私レベルが手を出していいものじゃありませんでした。
ということで今日は【ネタバレあり】で書きます。
INDEX
あらすじ
(【ネタバレなし】と同じ)
内容
あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれ兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作。書き下ろし短編「チズさん」を収録。
(筑摩書房HPより)
おもいで?
おそらくわたしが、小学校1年生のときだと思います。記憶があやふやです。あのおねえさんは、6年生でした。たぶん、家が近かったんだと思います。なぜ仲良くしていたのか、わかりません。なにがきっかけだったのか、わかりません。でも、教室に迎えにきてくれた記憶があります。一緒に帰って、花をつんだりして、お姉さんがはなかんむりを作ってくれたりして、遊びました。
親や学校の先生、クラスメートに、「なんであの人と遊んでるの?」といわれた記憶があります。
自分がどう思ったのか、おぼえていません。でも、びっくりしたから、記憶があるんだと思います。
おねえさんがわたし以外の人と話しているのを、みたことがありません。いつ、なんで遊ばなくなったのかも、おぼえていません。お姉さんが周囲から避けられる理由も、障害があったのか、家に問題があったのか、わかりません。
ずっとわすれていました。でも高校生の頃、はっと思い出すことがありました。それから、たまに、一瞬だけ思い出します。そのたびに、少しだけ、胸が痛いんです。
感想
あみ子
いいですか?
言っていいですか?
言いますよ?いいですか?
あみ子は、学習障害とかアスペルガーとか、そういうものを持っている子です。
言えた…………!
ネタバレなしじゃ、これ言っていいの!?どうなのよ!?と思ってたんです。
「学習障害とかアスペルガーとか」と書いたものの、私はそういうことに詳しくありません。だから発達障害なのか、なにを想定したのか、わかりません。
……読んでない方は、思いませんか?
「え?読んでもわからないの?」って。
わからないんです。
あみ子目線でお話が進んでいきますから。
あみ子がなにもわからなくったって、時間は過ぎていくんです。みんな、あみ子を通り過ぎて。
でも、そんな属性を固定しないから、私たちはあみ子に寄り添って読み進めることができる気がします。
「書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母」が、流産してしまいます。
あみ子は、お母さんへのプレゼントに「弟のお墓」を作ります。なんて残酷な…これを笑顔でプレゼントと言うのです。だって、あみ子に悪意はないのです。むしろあみ子の善意なのです。
この「弟のお墓」がなければ、もしかしたらあみ子は理解されて、あみ子に合った教育を受けて、生きられたのかもしれません。
ここからお母さんはうつになってしまい、家族が崩壊していきます。少しずつ、少しずつ。
お父さん
お父さんはあみ子と、面倒なことと、接するのを避けます。
私はこれを、とてもリアルに感じました。
今だからわかりました。学生時代や20代前半でこの本を読んでも感じなかったと思います。むしろ、お父さん最低だな!ただ逃げて!無責任!!って思ったと思います。
まぁ、今でも思うんですけど。
思いますけど、こういう人が大半なんだよなって。職場で見ている光景、面倒な(と勝手に判断した)ことから逃げるだけ、他人に投げるだけでなにもしな上司や同僚と同じなんですもん。言わないことは親切という人たち。
でも思えばずっとこんな人はいたんです。親や学校の先生をはじめ、クラスのみんなも、そして私も。
私は6年生だったお姉さんと、どうして遊ばなくなったんだろうと、読んだ後初めて考えました。もしかしたら、無視したりしたんでしょうか…。私はあみ子を見捨ててしまったんでしょうか…。
最後のトランシーバーで繋がろうとするあみ子の姿に、自分の姿を重ねて涙が出ました。でも、なにかに捨てられたくない自分なのか、捨てた自分なのかはわかりません。
残酷なのか、美しいのか
こんなこと決める必要はありません。
でも、考えてしまいます。
あみ子は変わりません。あみ子の「純粋」さは、小さなころから変わりません。
しかし「純粋」ゆえに家族は壊れていくのです。家族は誰も悪くないのに。
でも、あみ子は強いです。
いろんなことに、接さなければいいんですよ。お父さんや、世の中の大半の人たちのように。
でも、しないじゃないですか。
こんなにコミュニケーションが断絶してる世界で、それでもあみ子はのり君に好きって言えるんです。
美しすぎて残酷なんでしょうか?
なんか、そんなんじゃ飾ったような言葉にも見えるし、だからって言い表せる言葉があるとも思えません。
今村さんの文章が美しいから?
あみ子が純粋だから?
前向きだから?
家族も最後に出てくる男の子も優しいから?
読み終わるとすべてが哀しいです。
でも、この世界をもう一度味わいたくなります。
あーーーーーやっぱりとりとめもなく書いてまとまらなくなってしまいました!
こちらあみ子は不思議な本です。あみ子も突拍子もない子です。でも私たちは、最後には共感できるんです。
面白いのでぜひ、読んでみてください。
あ、でも今回受賞したのはあみ子じゃなくて「むらさきのスカートの女」なので、間違いのないように!